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雑多です。
「flow」第1部8〜9「異端審問」#完売本 #flow #イングリット #ユーリス #メルセデス #リンハルト #ドロテア #ベルナデッタ

8.
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一六一二年
 聖人たちだけは地の底から地上へ戻らんと伸ばされる最初の人々の手足に気付いた。彼らの目は霞んでいないからである。

 聖人たちは神祖に安らぎを与えた次の人々を守るために地の底から伸ばされる手足を切り捨てることにした。
───
 ローヴェ領の人目につくところには必ず、ある落書きがされていた。やがてこの落書きは異端者狩りが行われていた地域全てに広がっていくのだが、この段階ではローヴェ領の中だけにとどまっている。落書きはなんであれ治安が乱れる兆しだ。意味のわからない記号のような落書きは大体、盗人たちの符丁で後日、強盗に入られたり火事にあったりすることが多い。巡警たちは記号を見つけるとどういう意味なのか、解読しようとする。だからこそ最近やたらみかける落書きの意図が読めずに困っていた。
 〝NO〟と書いてあるだけだった。風刺や嫌がらせならば領主や名の知れた役人の名前や行状について.あることないことが書いてあるだろう。それにその中身から書き手を辿ることが出来る。しかし肝心の落書きは〝NO〟の一言だけなのだ。落書きだけではない。畑の麦がその形に踏みしめられていたこともある。今日は少し毛色が違っていて、役場の壁に貼ってあった官報やチラシ、ご老人言うところの引き札が〝NO〟の形に貼ってある。
 この現象に困惑しているのはささやかな行政や司法だけではない。ささやかな規模ではあるがこの街には無法者たちも存在している。巡警たちがやたらとこちらを疑うが、彼らにとっても無意味な符丁だ。ただひたすら不愉快で我慢ならない。
 例の形に貼り直されているチラシや官報を目にしたユーリスはまた自分たちが疑われてしまうと思い、苛立ちのあまり舌打ちをした。凝視しているうちに違和感を覚えた彼は魔が射したのか、白い指でチラシをそっと触った。この壁に貼られる紙は糊で貼られるのが常だが魔法で接着されている。やっていることは下らないが使われている魔法は恐ろしく高度だ。ローヴェ領出身でこんなことが出来るものはローヴェ領などに留まらず、成功するためにフェルディアかガルグ=マクへ行ってしまう。一連の落書きの下手人は余所者だ。
 ただユーリスはこれをひたすら真面目な、馴染みの巡警に教えてやるかどうかを即決できなかった。彼女はユーリスを週に何度か市で屋台を出す串焼き屋としか思っていない。本人は口が硬いのだがいくらでも身上など調べられるものでガラテア出身であること、口減らしで巡警になったものの頑なさと正義感が邪魔をして任地から弾き出され、流れ流れてローヴェ領まで来たことをユーリスは知っている。
 考えごとに没頭し過ぎていたせいだろうか。ユーリスは視線に気がつかなかった。自分に視線が向けられていると思った瞬間、振り向くと少し離れた建物の屋根が光った。遠眼鏡こと望遠鏡はセイロス教の禁忌に触れるとのことで他領はともかく、ローヴェ領内では使用出来なくなって久しい。食い荒らすほどの実りのないこの土地に余所者がなんの用事で来たのだろうか。利益も得られないのにこんなところに来るような余所者に顔を見られるのは嫌だったが、睨んでいることだけは判らせてやりたい。ユーリスはガラスが反射した光の方を睨みつけてやった。
 一方、睨みつけられたベレトは離れた建物の平らな屋根の上で苦笑していた。セテスたち親子と別れた後で髪を切って黒く染めたので、士官学校で教師をしていた頃のような見た目になっている。ベレトは顔を上げて様子を見たがるイングリットの頭を軽く抑えた。
「ユーリスが気づいたな。まだ頭は下げたままで……三数えたら頭を上げていい」
 ベレトは三数えると術式を解除した。壁に張り付いていた紙がバラバラと剥がれ落ち、何が表現されていたのかはその瞬間に壁を見ていたごく少数のものにしか伝わらない。
「本当にこんなことで捕らえられたメルセデスを助けられるのですか?」
「今すぐ助け出せというならオーラとライナロックをぶっ放すだけで済むが、それではメルセデスしか助けられない。今後このローヴェ領で火炙りにされるものが出ないようにするには少し時間はかかるが、これが一番だ」
 ファーガスブルーの制服に身を包んだイングリッドは渋々引き下がったが、それは禁制品である望遠鏡を持った男の体捌きから彼が凄腕の戦士であることを察しているからだ。
「ユーリスは単なる串焼き屋の若者です。巻き込んでしまって良いものでしょうか?」
「いや、巻き込もう。審問会までに一人でも多く味方が欲しい」
 異端審問は審問者による数日間の取り調べの後、住民たちが審問会を開催するかどうかを決める。住民たちが被疑者を守ろうとすれば開かれない。だが審問会が開かれた場合の有罪率は九割以上だ。審問会の有無は地域によってかなりの開きがある。残念ながらローヴェ領は尋問官から取り調べを受けた時点で有罪と感じる住民が多いため、審問会は開かれる確率が高い。
「デアドラのような都会の人からすれば不思議でしょうね」
 イングリットが自嘲気味に呟いた。長い睫毛で陰が目元に落ちる。ガラテアもあまり雰囲気が変わらないらしい。領主たちは領民たちを導いているつもりでいるが、実際は領民たちに合わせた行動をする。王を失った混乱と恐怖でダスカーの民を犯人と決めつけ、一方的に殺戮に及んだし、若く美しいエーデルガルトが気に食わない領主を失脚させてくれるなら、と言って大陸中を侵攻した。

───貴族が必死で平民たちを導こうとしても最終的に政治は納税する彼らの意志に従わざるを得ない。それならば大衆の意志がより良いものになるような機会を与え、環境を整えるべきだ───

 フェルディナント一世は義務教育について戦乱の最中からずっと考えていたという。彼の父親は為政者としては選択を失敗し続けたが、子育てには成功した。現実や大衆がフェルディナント一世の高い理想にまだ追いつかないとしても、理想を掲げ続けるのはエーギル家の使命だった。しかし六大貴族は実権を失いつつあり、それがこのような形で社会に影響を与えている。
「過ちを改めるのに遅すぎるということはない。時期の遅さは過ちを改めない理由にならない。メルセデスのところに行こうか」
 デアドラから来た男は全く見覚えがないはずなのにどこか懐かしい。彼はメルセデスが異端審問官に連行された場に居合わせた際、息を呑んでから彼女の名前を小さく叫んだ。彼女が連行される様な人物ではないと証言してくれるかもしれない。審問官の側について護衛をしていたイングリットは聞き取れた、その声に驚いて男の顔を見た。メルセデスを拘束するふりをして励ましながらも、男から目を離さなかった結果がユーリスを覗き見している。尋問が芳しくなければメルセデスへの取り調べは激化していくだろう。
 メルセデスが拘束されたのは彼女がよそ者であったこと、修道士であるにも関わらず信仰魔法ではなく薬草で医療行為を行ったことが理由だ。患者の中には稀に信仰魔法に拒絶反応を起こすものがいる。怪我を治しても、その代わりに視力聴力の一時的な低下や激しい頭痛に苛まれてしまう。メルセデスが判断した通り体質によって治療法を変更する方が合理的なのだが、彼女を訝しんだものがいたのだ。
 禁制品の双眼鏡を胸元にしまうとベレトは屋根から地上の路地裏へ直接、繋がっている外階段を一段跳びで駆け下りた。イングリットも後に続いたが階段がぐらついていて冷や冷やする。それでも巡警である彼女が同行しなくてはベレトは留置所に入ることが出来ないので慌てて彼を追いかけた。
───
 国際宇宙ステーションの実験モジュールにおいてエアロゲルを用いた宇宙塵の収集と微生物の曝露実験が開始された。

 収集された宇宙塵は実験モジュールに回収され着陸・帰還カプセルに搭載され地上に向け射出される。
───
 メルセデスはガルグ=マク旧市街にあるガルグ=マク司教座付属医学校で、医療を専門とする修道士になるため教育を受けた。メルセデスの母校は聖セスリーンを守護聖人とし、信仰魔法だけでなく薬学や医学を学ぶことができる。同じ頃、イングリットも聖キッホルを守護聖人とするガルグ=マク司教座付属法学校にいた。検事それに裁判官や弁護士を目指すものは資格取得を目指して四年間、巡警や裁判所の書記を目指すものは二年間ここで学ぶ。
 ふたつの学校は共にフォドラ統一戦争の際に統一王ベレトに協力し、共に戦った司教セテスとその妹フレンが対になるかのように設立した。寮も共同だったため、イングリットとメルセデスはそこで出会っている。
 留置所に入れられたメルセデスはイングリットが目を離した隙に手錠を後ろ手に変えられていた。あれでは飲み物や食べ物を口にする際、犬猫のように皿に顔を近づけねばならない。異端審問官の意図を理解したイングリットは震えるような怒りを覚えた。
 後ろ手で印を結んで魔法を発動させるかもしれないのに何を考えているのか、と自分と入れ替わりに留置所へ詰めていた異端審問官の衛兵を叱り付ける。その勢いを借りて今日の尋問は異端審問官ではなく自分がやる、と言って彼らを追い出した。
 手錠の位置を肩が少しでも楽になるように再び前へと変える。本来ならば魔法の使い手を拘束する時は定期的にサイレスで呪文が唱えられないようにせねばならない。
 それも知らなかったのかそれとも出来なかったのか。とにかく異端審問官の質の悪さが分かる。メルセデスは憔悴していたが、イングリットの一連の茶番の意図を正確に読み深く安堵のため息をついた。肩を小さく回して凝りをほぐしている。
「流石に参ってしまったわ〜。私は治療をしただけなのに」
「メルセデス、デアドラに知人はいますか?」
 淡い色の短く整えられた頭を横に振って、メルセデスは友人の質問に答えた。瞳には戸惑いが浮かんでいる。では近頃、落書きをして回っている謎の男ベレトはどこでメルセデスのことを知ったのだろうか。
 改めて怪しんでいるとどこからかリブローが発動し、メルセデスの体が癒されていくのがイングリットにもわかった。彼女はベレトを参考人として留置所に連れて入る予定だったが、ベレトから拒否されている。怪しまれないため建物には入らず手助けをする、と言っていたがこういうことかと合点がいった。
「質問を変えます。こういう芸当をやってのける知人はいますか?」
 メルセデスはしばし考え込んだ後に直接はいない、と返答した。心当たりはあるのだが、荒唐無稽過ぎて真面目な友人には言えない。今後どうしたものか───迷えるイングリットが口を開けたまま無言でいるとメルセデスが手首に鎖をつけたまま腕を伸ばし、両手でイングリットの頭を撫でた。
「私はまだ耐えられるから大丈夫よ」
 囚われの身である友人から気を使われたイングリットが情けなさにため息をついた。気持ちばかりが空回りしている。

 無為なやり取りを終え、部屋を去るイングリットの後ろ姿がメルセデスには何だか小さく見えた。きっと自信を失っているからだろう。
 歴史の長いガルグ=マクには数多くの怪談が伝わっていて、その中のひとつに「不死の借り出し人」がある。本名を名乗れないものがあからさまな偽名としてわざと統一王の名を使っただけであろう、という種明かしも込みでメルセデスはその怪談が好きだった。「不死の借り出し人」にはメルセデスの実家に伝わる書き残してはいけない口伝と内容が一致する部分がある。不死者はかつてメルセデスの先祖に言った。

───探さなければ何も見つからない。だから気が済むまで彷徨うつもりだ───

 留置所を出たイングリットが待ち合わせ場所であるユーリスの串焼き屋につくと、ベレトが既に串焼きに齧り付いていた。目の前の皿には既に大量の串が積み重ねられている。リブローをかけたあとでさっさと撤退していたらしい。
「変わった知り合いだな、イングリット」
 ユーリスの言葉を適当に誤魔化し、雑踏に消えていってくれるような小声でイングリットはベレトに質問した。
「どこでメルセデスと知り合ったのですか?」
「彼女の親戚と古い知り合いで元から名前だけは知っていた」
「たったそれだけの繋がりで何故、こんなややこしいやり方で助けようとするんだ?」
「でもユーリス、あれの影響かは分かりませんが、離婚する勇気のなかった方がきちんと離婚しました。あのままではいつか夫から殺されてしまうと心配だったので良かったです」
 そういうとイングリットはベレトから差し出された串焼きにかぶりついた。ユーリスの串焼きはあいかわらず絶妙な味付けで、毎日食べたくなる。
「参事会の連中が同意したらどうするんだ?」
「ライナロックでなんとかするが、そうならずに済むようにこの屋台をユーリスが店を出さない日に貸してくれ。椅子もあるしちょうど良さそうだ。明日なんてどうだろうか」
「俺様になんの得があるんだ!どんな裏がある?」
「裏はないが得はある。イングリットが好きになってくれるかもしれないぞ」
 虚を突かれ顔を真っ赤にするユーリスたちを見て、黒鷲の教え子たちが教え子同士で付き合っていたならばこんな感じだったのだろうかとベレトは思った。
 翌日からユーリスの厚意で貸してもらった屋台でベレトは身分や立場で分け隔てることなく無料で悩みごとを聞き、治癒魔法を連日かけ続けた。夜はユーリスと二人で領内に〝NO〟と刻む。
 落書きの犯人であることはばれなかった。しかし教会の許可を取らず、世俗の極みである市場で数日間に渡って治癒魔法を無料でかけ続けたため、ベレトは計算通り異端審問官に取り調べされることになった。
 イングリットに叱られたことを覚えていたのか、異端審問官の衛兵は手が前になるようにベレトに手錠をかけた。イングリットから聞いた通り、留置所は男女で檻が別れている。だが真向かいなのでメルセデスと直接話すためベレトはわざと逮捕された。
 ベレトを尋問した異端審問官は職業というより商売で異端審問官をやっている類の人間らしく、罪を贖うために浄財を出してくれそうな本家はあるのかとしきりに聞いてくる。メルセデスもベレトも外れだったのであからさまにやる気をなくしたようで、なんの儲けも出せないローヴェ領での裁判をさっさと終えたがっている。腹いせに異端者を火炙りにして、もっと豊かな土地へ移動しようと考えているのが丸分かりだった。
「メルセデス、聞いていたか?俺の名前を聞いた瞬間にやる気をなくしていたな。アイスナーなんてファーガスでは典型的な平民の名字だからな」

 見張り番も眠る夜更けに、ベレトは狭い廊下越しに苦笑しながらメルセデスにそう話しかけた。窓から入る白い月明かりが彼女を照らし神々しい雰囲気になっている。
「私の実家に伝わる不死者の話をしても良いかしら?こちらは名乗った覚えはないのに不死者は何故か私たちの名を知っているのよ」
「それは不思議な話だな」
 一方でベレトのいる部屋は窓の位置の都合か月明かりはあまり入らず顔に濃い影が下りている。ベレトの探し物は未だに見つかっていないが、それを伝えてメルセデスの一族の口伝が変化してしまうのも何となくもったいない。

───
 地上の微生物が宇宙空間でどれくらい生存できるのか、どの様に変化していくのかについて調査する為に極限環境微生物と酵母を入れた容器を実験モジュール外に設置。

 生物及び有機化合物の惑星間移動が可能かどうかを検証する。
───
 巡回中の異端審問官が見つけた異端者を審問会にかけるには領主と領民から作る参事会双方の合意が必要だ。審問の結果、命を奪うことが殆どであるため異端審問官は必ず地元の事情も汲んだ、という形式を守らねばならない。実入りの悪い地域では異端者を弾劾する動きが地元の領主批判の熱狂に繋がる前に異端者を速やかに火炙りにして終わるものだが、街に溢れる妙な落書きのせいか今回のローヴェ領では珍しく領主と参事会の意見が割れた。
 何に対しての〝NO〟なのか全く明示されていないため教会が落書きの内容を取り締まることはできない。それに落書きという行為を取り締まるのは世俗の権力の仕事だ。領内の巡警たちが田舎故の人手不足の中で本当に困惑しながら、下手人を探し続けていたことが記録にきちんと残っている。イングリットが真面目に書類を作成していたので異端審問官は地元の巡警が怠惰だと難癖をつけることもできなかった。

 残されていた記録によるとやり方も段々と巧妙になり、巡警たちも取り締まれないようになっていった。〝NO〟と読めるように物が並べ替えてあったり地面が濡れている。前者はともかく後者は上からバケツで水をかけてしまえばもう読めない。物を並べ替えるもよは厳罰に処す、道に水を撒くものは厳罰に処す、などと世俗に属する彼らが言えるわけはなかった。どちらも日常の行為で、許可制になどしてしまったら業務を圧迫してしまう。
 領主である現在のローヴェ伯は個人的な意見はともかくガルグ=マクで教育を受け、神学について多少は知識がある。異端審問官が何をもって修道士たちを異端と判断したのか、彼にも多少は把握できた。
 だから異端審問官に逆らえなかった。しかし参事会の人々はそうではない。彼らは皆信心深く毎週末必ず礼拝に出席する。しかしセイロス教聖典の読み方を理解していない。綴りは判れど教義の読み解き方を知らずに祈りを捧げている。
 領民たちにとって余所者はこちらが田舎ものであることを蔑む、非常に腹が立つ存在だ。今回槍玉に挙げられた余所者二人は何やらよく分からない教会の難しい作法を守らなかったらしい。それでもローヴェ領の病人とけが人に尽くしてくれた。
 たった一言〝NO〟と言えば二人を助けられる。そんな訳で参事会の出した結論は〝NO〟だった。
 領主さまや尊い教会から派遣された偉い人の意見に異議を唱えるなど恐ろしくて出来ない。ずっとそう感じていたが実際は呆気なかった。それは違う、と主張しても世界は滅びなかった。それに領主が恐れていたようなことも起きていない。領民が領主や教会に少しでも異議を唱えるのは叛乱や暴動の始まりで、そんなことは絶対にあってはならないと考えていた。だが街は平穏を保っている。
 しばらく入浴をしていないから、と焦って頬を染めるメルセデスをイングリットが喜びのあまり抱き上げていた。雲の隙間から陽が射す煉瓦造りの留置所の前で、地域に尽くすことを示すファーガスブルーに染められた巡警の制服と純潔と民への奉仕を表す白の修道服が重なり合っている。二色が風ではためく姿はただひたすら美しい。
 彼女たちの顔立ちが美しいことはこの場合、重要ではなかった。修道士の本分通り病人と怪我人に尽くしたメルセデスを、巡警として真面目に職務を遂行していたイングリットが害することなく済んで幸せそうにはしゃいでいる姿が美しい。
 美は人の心を動かし心の在り方を変える。心の在り方が変われば言動が変化する。イングリット自身はあまり意識していないが、真面目で巡警として地域の人に寄り添う彼女は人気者だ。参事会の面々は息子の嫁に来てくれないだろうかと皆思っている。彼女たちの作り上げた美しさによって、彼らは言語化できずとも己の選択の正しさを知った。領主であるローヴェ伯も内心では暴動が起きず、自領内で火炙りにされる異端者を出さずに済んだことを良しとしている。
 ベレトは湧き立つ人々から背を向けて、祝祭のような空間から急いで距離を取ろうとする異端審問官の馬車を眺めていた。自分もセテスもいないガルグ=マクで誰がどのように絶望し、異端審問などと言う恐ろしい行為が流行ったのだろうか。
 肩を軽く叩かれ振り向くとユーリスがベレトの背後をとっているをすり抜けられた。こんなことはかれこれ何年ぶりだろうか。
「あの馬車に向けてライナロックを一発かまそうなんて思ってないよな?」
 ベレトが無言で首を横に振ったのを見てユーリスが人の悪そうな笑みを浮かべる。
「残念だ。手伝ってやりたかったよ」
「イングリットのところに行かなくていいのか?」
「俺は野暮じゃないからああ言う場に割り込まないんだ。楽しそうだし好きなだけくるくるまわらせておこうぜ」
 ユーリスもベレトと同じく、審問官たちが乗り込んだ馬車がどこへ向かっているのか確認しに来たらしい。
「あれはガルグ=マクだな。あいつら司教座に泣きつきたくても、どう報告すれば良いか分からねえだろうな。上手いやり方だよ」
「流行るといいんだが」
   これからガルグ=マクに乗り込むか地方の様子を見て回るか決めねば───そう思った瞬間、ベレトは強烈な眠気に襲われて意識を失った。ユーリスがいなければ頭を石畳で強打していただろう。彼が血相を変えて身体を支えてくれたことも分からず、これがフレンが嫌っていた〝眠り〟かと思う隙もなかった。
 〝眠り〟からベレトが目覚めた時、傍にいたのはベレトの知らないメルセデスだった。確か彼女は肩より長く髪を伸ばしていたはずなのに。それに課題協力を依頼した覚えもない。何故自分を看病しているのがマヌエラやリンハルトではないのだろうか、と思った瞬間にベレトの中で時が四世紀ほど進んだ。こんな風に時間の感覚を失うのは久しぶりで、身体にも負荷がかかっていたのか咳き込んでしまう。自分はヒトとしては規格外の長命だが、眷族の中ではきっと驚くほどの短命なのだろうとベレトは悟った。
「倒れてから十日経過したわ。イングリットとユーリスは仕事。ユーリスは宿代を立て替えてくれたのよ。後で返してあげてね」
 日付を聞いて深く安堵のため息をついたベレトは左胸に右手を置き再び目を閉じた。まだひたすら怠くて目を開けていられない。意識がある時はウインドを応用して鼓動があるように見せかけられるのだが、完全に意識を失ってしまったし今も怠いのでやりたくない。メルセデスは十日前、ベレトの心音や呼吸を確認した時に何を感じただろうか。
「言いふらすことでもないから言わないわ」
 メルセデスはそう言ってベレトの右手の上にそっと手を重ねた。ひんやりとした心地がいい手だった。
「ありがとう。俺が探しているものはまだ見つからないんだが、たまに君たちに会えると本当に嬉しいよ」
 ベレトは遥か昔に失った半身ソティスのこと、孤独感に蝕まれてしまったレアのことを考えた。ベレトが地位を手放した結果、フォドラは閉塞感に満ち満ちている。眷族はどうあるべきだったのだろうか。その答えが未だにベレトには見つけられない。

9.
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一六五〇年
 生命を構成する要素がどの様にして組み合わさったのか、細胞の中にそれらが閉じ込められた理由、これらのプロセスを進めるためのエネルギーは何であったのかを説明できなければどのように生命が始まったかを説明できたとは言えない。

 パンスペルミア説は根本的な疑問に答えていないという意見もある。
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 三十年ほど前に辺境の風土病がフォドラ全土を襲った。感染率と致死率が共に高く小さな村の住民が全滅したこともあったという。当時の記録によると街には節々が黒ずんだ亡骸があふれていたらしい。
 医師たちは感染を予防するため革製の長衣に全身を包み仮面をつけ、無力感に苛まれながら歩き回って死者の数を数えた。医師たちと似たような格好をした聖職者たちは動けなくなった病人たちへ最後の祈りを捧げて回る。そんな日々はフォドラ全土の人口が三分の二に減少するまで続いた。
 病禍を経た社会は大きな変化を遂げていく。フォドラは長らく王を持たず、貴族たちの中から執政官が選ばれていたが人材が枯渇した。この時期に初めて騎士階級出身の執政官が選ばれている。
 人口減以外の、何よりも大きな変化は魔法が使えるヒトの割合が激しく減少してしまったことだ。それまでも全人口の五パーセントほどしか存在しなかったが、病禍の後は二パーセントに減少してしまった。社会は魔法に代わる何か、を早急に見つけなくてはならない。
 そんな状況下で、フェルディアとフェルディアを参考に下水道が整備された各地の新市街だけは難を逃れることが出来た。皮肉なことにアガルタの民、つまり闇に蠢くものたちの技術や知識が人々を救っている。後に病は悪臭が原因とされ、生き残った人々が各地で持ち主のいなくなった土地を使い下水道や公衆浴場を整備した。

 飛竜や天馬に乗って首都であるガルグ=マクからファーガス方面に向かうと大きな黒い森が見える。ガルグ=マクから北上した人々はここがもうファーガスであることを木の葉の形で知るし、ファーガスから南下した人々はこの先にもう見慣れた木々はないことを知る。その森の端には歴史は長いが規模の小さな女子修道院があった。
 修道院で眠り続ける娘の介護をするため、長逗留しているセテスは行きがけに目にした光景にずっと心を痛めていた。その村では病を持ち込む余所者との接触を避けるため沈黙交易をしていたらしい。村境に木箱に入れた金銭を置いておくと商人が木箱の金銭を受け取り、必要な物を木箱の中に置いて去る。村人は商人が完全にいなくなったのを確認してから購入した物を村の中に運ぶ。セテスが上空から目にした木箱は中身が回収されないまま数日が経過していた。村人が全て死に絶えたか身動き出来る者がもういなくなってしまったのだろう。
 眷族がヒトを管理するようになってから何度か病が流行ることはあったが、今回のものは規模が違う。フェルディアの下水道にしても予防手段に過ぎず治療法は見つからないままだ。セテスがつい、アガルタの民が健在であれば全く違う方法で流行病に対抗できたかもしれない、と考えてしまうほどの惨状だった。このままではフォドラの首飾りから西は無人の荒野になってしまう。ある程度の人口がなければ文明を維持することも出来ない。レアが慈しんでいたフォドラの人々、娘のフレンを愛してくれた人々の子孫が死に絶えてしまうかもしれない。
 フレンの体を拭いた修道女たちはいつもなら娘の眠る病室のすぐ近くに控えているセテスが見当たらないので、不思議に思い手分けして敷地内を探した。夕闇の中、熱心に聖堂で祈るセテスの横顔は苦悩と迷いに満ちている。少しでも気を紛らわすことができればと思った修道女たちはセテスを談話室でのお茶に誘った。
 質素な作りの談話室には大きな年代物の給茶器と茶碗などをしまっている硝子戸の棚があった。給茶器は三段重ねのものでファーガス特有のデザインをしている。下段に熱した炭を入れ、小さな蛇口がついた中段に入れておいた水を沸かす。上段には茶葉と湯を入れっぱなしのティーポットを置いておく。当然煮詰まっていくのだが飲む時には中段のお湯で薄める。
 老いた修道女は慣れた手つきで給茶器上段からティーポットを取り外し中身を確かめた。この修道院に黒魔法の使い手はいないので炭はその代わりだろう。煮詰まって濃くなってしまったお茶をお湯で薄める。
「寒い田舎では紅茶の楽しみ方も異なるものです。来客用ではなく自分たちが楽しむためですので多少の無作法はお許しください」
 そういうとセテスを招いた修道女は若い修道女に人数分の茶碗と小皿と小匙を用意させた。手早く準備するためだろうか。何を求められているのか完全に分かっている若い修道女は更に戸棚から何かの瓶とジャムの瓶を取り出した。ジャムは色からすると木苺か何かのようだった。お茶請けだろうか。蓋を開けると素朴な甘い香りが部屋中に広がった。手慣れた様子で赤いジャムを小皿に盛り付けていく。
 皆の茶碗にお茶を入れて回っていた修道女が再びティーポットに中段のお湯を入れ、給茶器上段に戻すと謎の瓶の蓋を開けた。ふわっと香った匂いから察するにそれはかなりきつそうな蒸留酒だった。セイロス教では飲酒を禁止していないが推奨もしていない。修行の一環で絶つことが望ましいとされているが、この寒さでは体を温めるために必要なのだろう。
 老いた修道女が上機嫌でそれぞれのジャムの上に蒸留酒を振りかけていく。呆気にとられてその様子をセテスが見ていると、ある者は幸せそうに蒸留酒で伸ばしたジャムを舐めながら紅茶を口に含み、別の者はジャムの蒸留酒がけを紅茶に混ぜて飲み始めた。セテスも見よう見まねでジャムを舐めながら紅茶を飲んでみる。紅茶も淹れ方からして異なった。濃く煮詰めたものをお湯で薄めて飲むため全く味が違う。
「これはなかなか強烈な……だが癖になるというかなんというか……」
「私どもは辛いことがある時はこうして飲み干してしまうことにしております」
 老いた修道女の言葉を聞いたセテスの脳裏にある考えが閃いた。自分の血がどんな影響を及ぼすのか正確に確かめる時間も設備もない。だが眷族の血が病を予防すること、病の症状を軽くすることだけは経験から知っている。検証なしにすぐに血を与えるとしたら騒ぎにならぬよう、偽りの希望にならぬよう、分からないように与える必要があった。
 だがこのお茶に混ぜてしまえばジャムの香りと甘味、蒸留酒の香りと味で血の味や匂いをごまかせるだろう。セテスも血を与えることによって、かなり自分の寿命が縮まると分かっている。だがこの惨状を目にして出来ることがあるのに何もせずにはいられなかった。

 流行病は森の近くにある小さな女子修道院や周りの集落も襲ったが、不思議とその地域では発症率が低かった。白魔法を使える人材の減少を受け、フェルディア総合大学に新設された医学部の医師たちが調査にやってきた。その地域は地下水が湧き、森には薪が豊富で毎日入浴する習慣と寒くて風邪が流行る時期には沸かしたお茶しか飲まない習慣があったことを致死率の低さと結びつけている。

 医師たちは気がつかなかったが、この地域で生き延びた人々には他にも共通点があった。皆、髪と瞳の色が緑色で黒魔法も白魔法も使うことができた。

 そしてそれは生まれつきではなかった筈なのに、彼らの子供たちにその形質が受け継がれた。

───
一六七五年
 地上に伸ばした手足が全て切られてしまったので最初の人々は目が霞んだ者たちの皮をかぶって地上の様子をうかがった。

 目が霞んだ者たちは宝が宝だと分からず、地中に打ち捨てていた。宝さえあればまた地上に戻れるかもしれないと考えた最初の人々はまず目が霞んだ者たちの皮を集めることにした。
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 山を切り開いて作られた首都ガルグ=マクの新市街には、統一王に仕えた六大貴族の上屋敷が固まっている地区がある。半世紀ほど前、病が流行った時代に貴族階級はかつてのような力を失った。だが人々はそれでも執政官を輩出し続けた六大貴族を名家として扱い、敬意を払う。誰が呼びはじめたか定かではないがこの地区はハイストリートと呼ばれていた。

 ここの住民はその殆どが.本宅がある自領と首都であるガルグ=マクを行き来しながら暮らしている。その一画、アールノルト家の上屋敷に士官学校へ放り込まれて不満たっぷりな子供たちが集まっていた。先祖の立派な名を与えられたリンハルト、ドロテア、ベルナデッタの三名は休日になると窮屈な寮を出て、数時間だけでも誰かの上屋敷に集まるのを何よりも大きな楽しみにしている。
 ベレト統一王の御代からの習慣で、セイロス教会に叙勲されて新たに貴族となったものたちはアドラステア帝国由来の称号である〝フォン〟を冠することがなくなっていた。これは叙勲された初代アールノルト家の当主ドロテアがフォンという称号を拒否したことによる。某貴族の私生児であったという彼女が生物学上の父親への反発を持ち続けていたからだ、とも言われるが真相は明らかになっていない。
 四世紀もの長い間、離れずに過ごした六大貴族たちは互いに婚姻関係を結び、名乗る姓は違えど今や気の知れた親戚のような存在になっている。三人はまずドロテアがアンヴァルから取り寄せておいた銘菓を食べ尽くした。数世紀前から歌劇団の劇場前にある名店は数多くの著名人に愛されたという。
 ベルナデッタは勝手知ったるドロテアの部屋の床に大きなクッションを抱いて座り込んでいる。リンハルトに至ってはドロテアのベッドに勝手に上がって横たわり、夢うつつ状態になっていた。
「野外演習やだあ!寮に帰りたくなぁい!一週間くらいお部屋でゴロゴロしてお絵描きしたい!」
 この部屋の主であるドロテアだけが室内で立っていた。机の上の箱を持って寝転んでいる幼馴染みたちに声をかける。
「二人共見てよ!」
 のろのろと起き上がった二人がドロテアの持つ箱を覗き込むと見事な細工の美しい硝子ペンが天鵞絨張りの箱の中に入っていた。ベルナデッタは基本やる気がない。だがひと目見て気に入ったのか素敵だ、何か描きたい、と騒ぎ出す。
「これは綺麗だね。どこで買ったの?」
「近くの店よ。前にリンハルトが欲しがってたものも置いてあったわ」
 リンハルトが欲しがっているのは片眼鏡と拡大鏡だ。
「連れて行ってよ」
 二人の会話を聞いたベルナデッタがベルも絵を描くのに硝子ペンが欲しいです!と珍しく乗り気なので三人は出かけることにした。庭の様なハイストリートから外れてどんどん路地裏に入っていく。ベルナデッタの記憶では靴屋だった店の前でドロテアが立ち止まった。看板も何もかもそのままだったが、中に入ると所狭しと硝子製品が靴と靴の間に飾られている。肩まで伸ばした黒髪を黄色いリボンでひとまとめにした店主が椅子に座って商品を布で拭いていた。傍には店内に入りこんだ野良犬が丸まって眠り込んでいる。初見の客に気付いた瞳は若葉色だった。
「靴屋が夜逃げした後でこの店の権利を中身ごと買ったんだ。欲しい靴があったら履いてみるといい。売るぞ」
「あなた変わり者ですね!ベルにはわかります!」
 そんなことをわざわざ本人に向かって告げるベルナデッタこそどうなんだ、と思ったが面倒くさかったのでリンハルトは黙って店内を物色している。ドロテアが言っていた通り、硝子工芸品に混ざって様々なレンズが靴と靴の間に置いてある。壁には様々な枠がかけてあって、その場で好きな枠にはめてその場で拡大鏡にしてくれるらしい。
「レンズは全部あなたが研磨したの?」
「半々かな。パルミラで修行したんだ。自分が研磨したものは眼鏡屋に卸したりご覧の通り加工してして売ってる。工芸品もパルミラのものが多いかな?あれもそう」
 店主が指差した先にはトンボの羽をモチーフにしたランプシェードが飾ってあった。何故か長靴の上に。この美しくもどこか人を食ったようなふざけた感覚は確かにドロテア好みだろう、とリンハルトは思った。
 ベルナデッタは球体硝子から見た風景を描きたい、とのことで球体硝子と硝子ペンを買った。いつの世も芸術家はそのモチーフが好きらしい。夢中になって球体ガラス越しに店内を眺めている。
 ドロテアは売れ残っていたサンダルを買い、リンハルトは片眼鏡をひとつと片眼鏡と寸法が同じ拡大鏡をひとつ買った。リンハルトが無意識に片眼鏡をつけたまま顔の前に拡大鏡をかざす。
「リンハルト!だめですよぉ!」
「ちょっと!そういうことはヘヴリング領でやってちょうだい!」
 旧市街はセイロス教の総本山だ。顔を真っ青にして焦るベルナデッタとドロテアの声を聞き、店主は眉間にしわを寄せた。親指は首をかき切っている。
「へぇ信心深いね」
 セイロス教ではレンズを縦に重ねることを禁止されている。見えないものを見ようとしてはならないのだ。天上におわす女神の姿を人間が見ようと試みるなど不敬そのものである、と読み取れなくもない文章が聖典にあるから仕方がない。宗教とはそういうものだ。
「客に死なれると夢見が悪いものだ。その代わりにこれをどうぞ。そのうち試そうと思っていたものだが忙しくてまだ試していない」
 店主は小さなカードの真ん中に錐で穴を開けたもの、に何かを書き付けるとリンハルトに渡した。リンハルトは中身を改めてなるほどなるほど、と言いながら片目を瞑っている。意図が完全に伝わったのか受け取ったカードを窓にかざしている。好奇心が沸きあがって興奮したせいか、白い頰は朱に染まり瞳が輝いていた。
「硝子ビーズもいただこうかな。ねえ、あなた名前は何ていうの?これからしばらく相談に乗ってもらうから知らないと不便だよ」
「ベレト=アイスナーだ」
 店主の名を聞いたドロテアとベルナデッタがため息をついた。皆、偉大な歴史上の人物と名前が全く同じなのでベレトへの視線が同意や共感に満ちている。
「おや、随分と高貴な名前だね。僕はリンハルト=フォン=ヘヴリングだ」
 自分の名前を棚に上げ、リンハルトがベレトを揶揄った。統一戦争の際に活躍した先祖たちもこんな風に語り合っていたのだろうか。
「ファーガスでは典型的な平民の名字だよ。石を投げればアイスナー家の者に当たる」
 ベレトの言葉を聞いたリンハルトがまあ名前なんてそんなもんだよね、と言うので皆で笑ったその時、狙いすましたかのように休日の終わりを告げる教会の鐘が鳴り響いた。

 数週間後の休日にリンハルト一人でベレトの店に現れた。その手にはふたつ折りにした厚紙に穴を開け、硝子ビーズを嵌めて作った単レンズ式の簡素な顕微鏡の雛型がある。
「研磨できる?あと厚紙より真鍮か何かで作った方が良さそうだよ」
 レンズを前後に重ねず、ガラスビーズをひと粒使用するだけで倍率は百五十倍になる。球体レンズとして職人が研磨したレンズを使えば倍率は更に上がるだろう。
 ヘヴリング卿が作った単レンズ式顕微鏡はフォドラの生物学を大きく進歩させた。構造は単純なので現在では子供たちの自由研究の定番でもある。畳む