2025クロロレウェブオンリー匿名小説企画(匿名でお題にあった小説を書いて提出し、誰がどれを書いたのか予想する遊び)参加作品「月」 #クロロレ 続きを読む 夢の中で久しぶりに■■■■に会った。 「■■■■!そんなところにいたのか!」 「よう、ローレンツ」 「久しぶりだな。皆、君に会いたがっているぞ」 「そうか、すまんなあ……」 これが現実なら、申し訳なさそうな顔をするくらいなら連絡をよこせ、と怒っていただろう。だがこれは夢だ。 「無事でいてくれるならなんだっていいさ」 僕がそういうと■■■■は安堵のため息をついて手を差し出した。 「良かったら少し一緒に歩かないか?」 特に断る理由もないので僕は■■■■の手を取った。夢の中は何もかもが支離滅裂なので彼の案内なしに歩けない。行き先の分からない階段は上っていたはずなのにいつの間にか下りになっていた。扉を開けると部屋の様子を描いた絵があるだけで中には入れない部屋もどきがそこらじゅうにある。右側の窓から手を出すと雨粒で手のひらや袖が濡れるのに左側の窓から手を出すとなにもない部屋もあった。食堂に生けられた花は木彫りで皿の上の果物は布製だったので食べ物もない。夢の中では飲食できないという話は本当らしい。 「どうして地下の酒蔵に硝子で出来た窓があるのだ?土しか見えないではないか」 「まあこんな感じでことごとく奇妙なわけだ」 そういって■■■■は踊り場の扉を開けた。その先には渡り廊下とその先に煉瓦造りの塔が見える。星空に照らされた渡り廊下は途中から完全に闇に沈んでいるのにかなり大きな塔だけは松明で明るく照らされていた。 「夢の中とはいってもめちゃくちゃだ。一体どうなっているのだ、ここは」 「まあまあ、そんなに気にしないでくれよ。気を取り直してあの塔に行ってみようぜ」 「だがこの渡り廊下があの塔に繋がっているとは限らないだろう」 暗闇の中に足を浸した■■■■が手を叩くと三日月がまるで懐いた飛竜のように目の前に着地した。 「だからこれに乗っていくんだよ。詰めれば多分二人くらい乗れる」 落ちないように背中から抱きしめられながら、三日月に跨ったので僕は生まれて初めて馬に乗った時のことを思い出した。乗り心地は飛竜とほぼ変わらず、三日月はどんどん高度を上げていく。空の色は青、橙、紺、と目まぐるしく変わっていった。全てが歪んでいるが美しい。 「すごい景色だな!」 「そうだろ?だから退屈はしないんだ」 今は見事な星空なのにあの渡り廊下だけは途中から完全に闇に沈んでいて、それがやけに不自然だった。空の途中に窓があるような夢の中でそんな風に感じるのは無意味かもしれないが。 塔の周りをぐるぐる飛んでから僕たちはバルコニーへ降りることにした。だがバルコニーから中に入る扉が存在しない。 「この塔の中には何があるのだろう。大きさから言って、階段だけということはありえない」 「この塔は危険なもの、物騒なものを封じ込めてあるのさ」 「どうやって中を確かめたのだ?」 「塔の外に出てこられたのはこいつだけでね。まあ何処にいてもこいつが俺にまとわりつくから俺はここに囚われているのかもしれないな……」 ■■■■は聞き捨てならない愚痴をこぼしたが、それでも僕たちを乗せてくれた三日月をそっと愛おしげに撫でた。夢の中には月がふたつある。僕たちを乗せてくれた、■■■■に懐いている月と空に浮かぶ月だ。 「この、君によく懐いている三日月が危険……?」 「世間ではそういうことになってるんだよ。残念ながら、な……」 二つの月に照らされた■■■■は何故か泣きそうな顔をしている。 「……どういうことだ?説明したまえ!クロード!!」 「ローレンツ、お前夢の中でも俺と一緒だったのか?」 瞼が上がって真っ先に目に飛び込んできたのは腰に布を一枚巻いたきりのクロードだった。 「え、あ?夢……?」 「どんな夢だったんだ?俺は何をした?」 「支離滅裂で言葉にしにくいな……それに今、君と話したせいか殆ど忘れてしまった」 ローレンツは基本的に寝つきが良く、夢も見ないほど深く眠ってしまう。 「やっぱり現実の俺が良いだろ?」 だからクロード、いや、カリード王はやたら機嫌がいい。苦労して連れてきた王配が文字通り自分に夢中だったからだ。 「そうだな、君と共にいられるだけで安心する。もう勝手に消え失せてくれるなよ」 そういうとローレンツはクロードの頬を撫でた。畳む webイベント参加用,小説,BL 2025/07/16(Wed)
#クロロレ
夢の中で久しぶりに■■■■に会った。
「■■■■!そんなところにいたのか!」
「よう、ローレンツ」
「久しぶりだな。皆、君に会いたがっているぞ」
「そうか、すまんなあ……」
これが現実なら、申し訳なさそうな顔をするくらいなら連絡をよこせ、と怒っていただろう。だがこれは夢だ。
「無事でいてくれるならなんだっていいさ」
僕がそういうと■■■■は安堵のため息をついて手を差し出した。
「良かったら少し一緒に歩かないか?」
特に断る理由もないので僕は■■■■の手を取った。夢の中は何もかもが支離滅裂なので彼の案内なしに歩けない。行き先の分からない階段は上っていたはずなのにいつの間にか下りになっていた。扉を開けると部屋の様子を描いた絵があるだけで中には入れない部屋もどきがそこらじゅうにある。右側の窓から手を出すと雨粒で手のひらや袖が濡れるのに左側の窓から手を出すとなにもない部屋もあった。食堂に生けられた花は木彫りで皿の上の果物は布製だったので食べ物もない。夢の中では飲食できないという話は本当らしい。
「どうして地下の酒蔵に硝子で出来た窓があるのだ?土しか見えないではないか」
「まあこんな感じでことごとく奇妙なわけだ」
そういって■■■■は踊り場の扉を開けた。その先には渡り廊下とその先に煉瓦造りの塔が見える。星空に照らされた渡り廊下は途中から完全に闇に沈んでいるのにかなり大きな塔だけは松明で明るく照らされていた。
「夢の中とはいってもめちゃくちゃだ。一体どうなっているのだ、ここは」
「まあまあ、そんなに気にしないでくれよ。気を取り直してあの塔に行ってみようぜ」
「だがこの渡り廊下があの塔に繋がっているとは限らないだろう」
暗闇の中に足を浸した■■■■が手を叩くと三日月がまるで懐いた飛竜のように目の前に着地した。
「だからこれに乗っていくんだよ。詰めれば多分二人くらい乗れる」
落ちないように背中から抱きしめられながら、三日月に跨ったので僕は生まれて初めて馬に乗った時のことを思い出した。乗り心地は飛竜とほぼ変わらず、三日月はどんどん高度を上げていく。空の色は青、橙、紺、と目まぐるしく変わっていった。全てが歪んでいるが美しい。
「すごい景色だな!」
「そうだろ?だから退屈はしないんだ」
今は見事な星空なのにあの渡り廊下だけは途中から完全に闇に沈んでいて、それがやけに不自然だった。空の途中に窓があるような夢の中でそんな風に感じるのは無意味かもしれないが。
塔の周りをぐるぐる飛んでから僕たちはバルコニーへ降りることにした。だがバルコニーから中に入る扉が存在しない。
「この塔の中には何があるのだろう。大きさから言って、階段だけということはありえない」
「この塔は危険なもの、物騒なものを封じ込めてあるのさ」
「どうやって中を確かめたのだ?」
「塔の外に出てこられたのはこいつだけでね。まあ何処にいてもこいつが俺にまとわりつくから俺はここに囚われているのかもしれないな……」
■■■■は聞き捨てならない愚痴をこぼしたが、それでも僕たちを乗せてくれた三日月をそっと愛おしげに撫でた。夢の中には月がふたつある。僕たちを乗せてくれた、■■■■に懐いている月と空に浮かぶ月だ。
「この、君によく懐いている三日月が危険……?」
「世間ではそういうことになってるんだよ。残念ながら、な……」
二つの月に照らされた■■■■は何故か泣きそうな顔をしている。
「……どういうことだ?説明したまえ!クロード!!」
「ローレンツ、お前夢の中でも俺と一緒だったのか?」
瞼が上がって真っ先に目に飛び込んできたのは腰に布を一枚巻いたきりのクロードだった。
「え、あ?夢……?」
「どんな夢だったんだ?俺は何をした?」
「支離滅裂で言葉にしにくいな……それに今、君と話したせいか殆ど忘れてしまった」
ローレンツは基本的に寝つきが良く、夢も見ないほど深く眠ってしまう。
「やっぱり現実の俺が良いだろ?」
だからクロード、いや、カリード王はやたら機嫌がいい。苦労して連れてきた王配が文字通り自分に夢中だったからだ。
「そうだな、君と共にいられるだけで安心する。もう勝手に消え失せてくれるなよ」
そういうとローレンツはクロードの頬を撫でた。畳む