「説明できない」7.誘拐 #説明できない #クロロレ #完売本 続きを読む フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけ、クロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。 「ではこの時点でベレト……失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち、敵対すると決めていた可能性もあるのか」 ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので、近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。 「そうでもなければ、あの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」 「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」 ベレスはエーデルガルトの戴冠式に参加していたらしいので、そこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。 「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確かだ。しかしフレンさんは助けを待っているだろう」 「そうだな、ローレンツの言う通りだ。お門違いな質問で揺さぶるのは一度だけにする」 翌日の夕食後、クロードはセテスの執務室を訪れた。 「失礼します。セテスさん、何故フレンが拐かされたのだと思いますか? 貴方ではない理由は何だと思いますか?」 彼女の兄であるセテスは大司教補佐だ。大司教レアと親しい間柄であるとはいえ補佐に過ぎず、権限も財産も持っていない。セテスを脅迫し、意のままに操るためにフレンを誘拐したところでたかが知れているのだ。クロードの記憶に残るあの茶番は何を隠すべく演じられたのだろうか。 「何を馬鹿な、いや、すまなかった。確かに考える価値はある。そうだな、まずフレンと違い私を誘拐しようとすれば骨を折ることになる」 では死神騎士はセテスでも構わなかったのだろうか。 「セテスさんを脅迫するために拐かされた可能性もありますよね。何か連絡はありましたか?」 クロードが見当違いなことを言うとセテスはそれまで緊張していたせいか顔が力んでいたのに一瞬、どこか安心したような力の抜けた顔をした。妹は取り返したいが犯人の真の動機についてクロードに知られたくないのだろう。 「もし犯人から連絡があればとっくに皆を呼び出している。情報の共有は大切だからな」 やはりフレン本人に何かがあるのだ。そこまではクロードにも予想できる。だがそこから先がわからない。エーデルガルトは半年後セイロス教会へ宣戦布告する。ディミトリはエーデルガルトの動きを見てファーガスに中央教会とセイロス騎士団を迎え入れた。クロードと違ってセイロス教を信じていたからだ。クロードは命を落としたのにまだセイロス教を信じることが出来ない。 「何か思い当たることがあれば俺には言わなくても良いですが、ベレト先生には話してください」 セテスにそう告げてクロードは部屋に戻った。愛用している書字板を開き鉄筆を蝋の上に走らせていく。フレンに限定はしない。一般的な人体からは何を得られるのか。髪の毛は鬘の材料や火口、肉は食材、骨や皮膚は加工品の素材になる。だがそんなありふれたものは人を誘拐せずとも入手可能だ。呪術的な観点から見れば血や眼球が人気だが、そんな面倒なことをする位なら直接、毒を盛るか剣で斬りつけた方が早い。英雄の遺産のように戦況を一変させる何かをその身に秘めているならば話は別だが───そんなものをその身に宿す存在はヒトであると言えるのだろうか。 仮にヒトではないとして、それはフレンが消費される理由になるのだろうか。答えの出ない問いがクロードの脳内を満たす。その詳細が分かったところでクロードの好奇心が満たされるだけで彼女がいたのはイエリッツァの部屋であった、と突き止めた理由にはならない。 クロードは緑色の瞳で書字板を眺めた。長いこと考え込んで単語をいくつも書き散らしたが、フレンは何の材料?と言う一文以外は残しておく価値がない。鉄筆の後ろについているヘラで蝋を均した。ローレンツに書字板の中身を見られて以来クロードは書き付けを暗号化している。パルミラ語で文章を作り、その音をフォドラの文字で記す。その際に文字を置き換えて、ぱっと見では単語すら拾えない状態にしてあった。ローレンツには全てを曝け出させたのにひどく不均衡な状態だが、知らずにいれば彼の悩みをひとつ減らせる。 考え込んでいるうちに蝋燭が燃え尽きつつあった。エーデルガルトたちの悪意に気付かず、父の仇にベレスが与すると予想出来ずにいた五年前のクロードが大喜びで修道院内を探索していた時間帯だ。挙兵の準備に勤しむヒューベルトには深夜の徘徊に気付かれていた可能性が高い。逆に近頃、クロードが出歩かない事を不審に思われている可能性もある。クロードは部屋着の上から黒い外套を羽織った。 ローレンツとクロードの記憶通り事態は進行した。一つ付け加えるならばクロードがセテスにちょっかいを出したことだろうか。敢えて見当違いだと分かっている質問をセテスにしたら先方は何故か安心した、とクロードから聞いてローレンツは眉を顰めた。やはりセイロス教会は何かを隠している。 五年前からセイロス教会の体質を問題視していたクロードが正しかった。だがそれは大乱を起こす理由になり得るのだろうか。クロードは元から英雄の遺産と白きものについて探っていたが、それに加えて五年後のエーデルガルトが檄文で言及していた教会の暗部についても調べ始めた。 「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったが、そんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」 「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」 エーデルガルトが見つけた、と称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探しているがイエリッツァに中々辿りつかない。彼の目からすれば同僚であるイエリッツァは疑いにくいのだろう。事態が膠着したまま日数を重ね、商人から依頼された盗賊の征伐を終えた晩にローレンツはクロードの部屋を訪ねた。 「クロード、君の記憶でも月末だったか?」 「そうだ。ただ、知っていて犯人を泳がせていた可能性もある」 クロードは五年後のクロードにとどめを刺したと言うベレスをとことん警戒している。だがローレンツには想像がつかない。ベレトはベレトだ。ダスカーの悲劇で傷ついたファーガスの学生たちに真摯に寄り添っていた姿しか浮かばない。 「君の体験を思えば仕方ないのだろうがそれでも穿ちすぎだ」 エーデルガルトの所業についてはローレンツもクロードも庇いようがない。入学早々盗賊を雇ってクロードとディミトリを殺害しようとしただけでも噴飯物だし、五年前に惨劇が起きたルミール村は帝国の領土だ。そしてローレンツの記憶では生き残った村人を保護したのは帝国ではなくセイロス教会だ。そんなエーデルガルトにベレスが与した理由は何なのだろうか。グロスタール家が帝国に与したのは、領地がルミール村のように扱われるのを恐れてのことだった。ローレンツはクロードの机上に置かれた本を大きさ別に積み上げてから言葉を続けた。考え過ぎかもしれない。 「案外、何故そんなことをしたのかエーデルガルトさんから話が聞きたかっただけかもしれないではないか」 ローレンツの素朴な言葉を聞いてクロードはぽかんと口を開けた。中身はローレンツより一歳下なだけだが年相応の少年らしい表情をしている。 「倫理観が好奇心に負けただけってことか? だがレアさんの代わりに勝手に戴冠式に出てたんだぜ?」 今後の展開を知っているからこそ、現在のローレンツはクロードの深夜徘徊について好意的に評価が出来る。しかし学生時代は好奇心に負けて規則を破るクロードをよく思っていなかった。 「それだって単なる好奇心の発露かもしれない。君にも心当たりがあるだろう。だが僕も人のことは言えない」 教師陣に対してイエリッツァが怪しい、とローレンツが示唆していないのは、今のクロードなら時間さえあれば五年後を知る自分たちですら知らない何かを突き止めるのではないか、と期待しているからだ。クロードはローレンツの真っ直ぐな視線に耐えかねて視線を外した。その先には工具がいくつか置きっぱなしになっている。 「期待に応えられなくて悪かった。明日、先生たちにそれとなく伝えよう。俺たちに知らされてからもう十日になる。探索の時間はいくらでも欲しいが、さすがにフレンが気の毒だ」 「分かった。君に任せる」 セテスも自力で一日二日はフレンを探したはずだから実際はそれよりも数日長い。月末までフレンは堪えられると知っているが、クロードの言う通り辛い時間は短い方がいいに決まっている。だがローレンツの記憶に残るクロードらしからぬ判断だった。そう感じてしまったことが申し訳なくて、ローレンツも先程のクロードのように相手から視線を外した。 「なんでそんな意外そうな顔してるんだ?」 褐色の手が白い頬を挟んだ。彷徨う視線をこちらに向けろとクロードは言いたいらしい。 「すまない、どうしても自分の記憶と比べてしまう」 「でもお前の目の前にいるのは俺だよ。お前に心を開こうとしなかった奴じゃない」 緑の瞳がローレンツを捉えた。きっと直視したら目を傷めてしまうほど眩しい、と思ったから五年前の自分は目を閉ざしたのだろう。 「明日、先生方に言うなら君抜きで戦闘があるだろうから失礼するよ」 クロードの瞳に映る自分をこれ以上、見ることにローレンツは耐えられそうになかった。 翌日、イグナーツが駆け込んできてイエリッツァの部屋で倒れているマヌエラを発見、死神騎士との戦闘の後にフレンと昨年度の学生だと自称するモニカが保護された。畳む 小説,BL 2024/11/16(Sat)
#説明できない #クロロレ #完売本
フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけ、クロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。
「ではこの時点でベレト……失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち、敵対すると決めていた可能性もあるのか」
ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので、近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。
「そうでもなければ、あの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」
ベレスはエーデルガルトの戴冠式に参加していたらしいので、そこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。
「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確かだ。しかしフレンさんは助けを待っているだろう」
「そうだな、ローレンツの言う通りだ。お門違いな質問で揺さぶるのは一度だけにする」
翌日の夕食後、クロードはセテスの執務室を訪れた。
「失礼します。セテスさん、何故フレンが拐かされたのだと思いますか? 貴方ではない理由は何だと思いますか?」
彼女の兄であるセテスは大司教補佐だ。大司教レアと親しい間柄であるとはいえ補佐に過ぎず、権限も財産も持っていない。セテスを脅迫し、意のままに操るためにフレンを誘拐したところでたかが知れているのだ。クロードの記憶に残るあの茶番は何を隠すべく演じられたのだろうか。
「何を馬鹿な、いや、すまなかった。確かに考える価値はある。そうだな、まずフレンと違い私を誘拐しようとすれば骨を折ることになる」
では死神騎士はセテスでも構わなかったのだろうか。
「セテスさんを脅迫するために拐かされた可能性もありますよね。何か連絡はありましたか?」
クロードが見当違いなことを言うとセテスはそれまで緊張していたせいか顔が力んでいたのに一瞬、どこか安心したような力の抜けた顔をした。妹は取り返したいが犯人の真の動機についてクロードに知られたくないのだろう。
「もし犯人から連絡があればとっくに皆を呼び出している。情報の共有は大切だからな」
やはりフレン本人に何かがあるのだ。そこまではクロードにも予想できる。だがそこから先がわからない。エーデルガルトは半年後セイロス教会へ宣戦布告する。ディミトリはエーデルガルトの動きを見てファーガスに中央教会とセイロス騎士団を迎え入れた。クロードと違ってセイロス教を信じていたからだ。クロードは命を落としたのにまだセイロス教を信じることが出来ない。
「何か思い当たることがあれば俺には言わなくても良いですが、ベレト先生には話してください」
セテスにそう告げてクロードは部屋に戻った。愛用している書字板を開き鉄筆を蝋の上に走らせていく。フレンに限定はしない。一般的な人体からは何を得られるのか。髪の毛は鬘の材料や火口、肉は食材、骨や皮膚は加工品の素材になる。だがそんなありふれたものは人を誘拐せずとも入手可能だ。呪術的な観点から見れば血や眼球が人気だが、そんな面倒なことをする位なら直接、毒を盛るか剣で斬りつけた方が早い。英雄の遺産のように戦況を一変させる何かをその身に秘めているならば話は別だが───そんなものをその身に宿す存在はヒトであると言えるのだろうか。
仮にヒトではないとして、それはフレンが消費される理由になるのだろうか。答えの出ない問いがクロードの脳内を満たす。その詳細が分かったところでクロードの好奇心が満たされるだけで彼女がいたのはイエリッツァの部屋であった、と突き止めた理由にはならない。
クロードは緑色の瞳で書字板を眺めた。長いこと考え込んで単語をいくつも書き散らしたが、フレンは何の材料?と言う一文以外は残しておく価値がない。鉄筆の後ろについているヘラで蝋を均した。ローレンツに書字板の中身を見られて以来クロードは書き付けを暗号化している。パルミラ語で文章を作り、その音をフォドラの文字で記す。その際に文字を置き換えて、ぱっと見では単語すら拾えない状態にしてあった。ローレンツには全てを曝け出させたのにひどく不均衡な状態だが、知らずにいれば彼の悩みをひとつ減らせる。
考え込んでいるうちに蝋燭が燃え尽きつつあった。エーデルガルトたちの悪意に気付かず、父の仇にベレスが与すると予想出来ずにいた五年前のクロードが大喜びで修道院内を探索していた時間帯だ。挙兵の準備に勤しむヒューベルトには深夜の徘徊に気付かれていた可能性が高い。逆に近頃、クロードが出歩かない事を不審に思われている可能性もある。クロードは部屋着の上から黒い外套を羽織った。
ローレンツとクロードの記憶通り事態は進行した。一つ付け加えるならばクロードがセテスにちょっかいを出したことだろうか。敢えて見当違いだと分かっている質問をセテスにしたら先方は何故か安心した、とクロードから聞いてローレンツは眉を顰めた。やはりセイロス教会は何かを隠している。
五年前からセイロス教会の体質を問題視していたクロードが正しかった。だがそれは大乱を起こす理由になり得るのだろうか。クロードは元から英雄の遺産と白きものについて探っていたが、それに加えて五年後のエーデルガルトが檄文で言及していた教会の暗部についても調べ始めた。
「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったが、そんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」
「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」
エーデルガルトが見つけた、と称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探しているがイエリッツァに中々辿りつかない。彼の目からすれば同僚であるイエリッツァは疑いにくいのだろう。事態が膠着したまま日数を重ね、商人から依頼された盗賊の征伐を終えた晩にローレンツはクロードの部屋を訪ねた。
「クロード、君の記憶でも月末だったか?」
「そうだ。ただ、知っていて犯人を泳がせていた可能性もある」
クロードは五年後のクロードにとどめを刺したと言うベレスをとことん警戒している。だがローレンツには想像がつかない。ベレトはベレトだ。ダスカーの悲劇で傷ついたファーガスの学生たちに真摯に寄り添っていた姿しか浮かばない。
「君の体験を思えば仕方ないのだろうがそれでも穿ちすぎだ」
エーデルガルトの所業についてはローレンツもクロードも庇いようがない。入学早々盗賊を雇ってクロードとディミトリを殺害しようとしただけでも噴飯物だし、五年前に惨劇が起きたルミール村は帝国の領土だ。そしてローレンツの記憶では生き残った村人を保護したのは帝国ではなくセイロス教会だ。そんなエーデルガルトにベレスが与した理由は何なのだろうか。グロスタール家が帝国に与したのは、領地がルミール村のように扱われるのを恐れてのことだった。ローレンツはクロードの机上に置かれた本を大きさ別に積み上げてから言葉を続けた。考え過ぎかもしれない。
「案外、何故そんなことをしたのかエーデルガルトさんから話が聞きたかっただけかもしれないではないか」
ローレンツの素朴な言葉を聞いてクロードはぽかんと口を開けた。中身はローレンツより一歳下なだけだが年相応の少年らしい表情をしている。
「倫理観が好奇心に負けただけってことか? だがレアさんの代わりに勝手に戴冠式に出てたんだぜ?」
今後の展開を知っているからこそ、現在のローレンツはクロードの深夜徘徊について好意的に評価が出来る。しかし学生時代は好奇心に負けて規則を破るクロードをよく思っていなかった。
「それだって単なる好奇心の発露かもしれない。君にも心当たりがあるだろう。だが僕も人のことは言えない」
教師陣に対してイエリッツァが怪しい、とローレンツが示唆していないのは、今のクロードなら時間さえあれば五年後を知る自分たちですら知らない何かを突き止めるのではないか、と期待しているからだ。クロードはローレンツの真っ直ぐな視線に耐えかねて視線を外した。その先には工具がいくつか置きっぱなしになっている。
「期待に応えられなくて悪かった。明日、先生たちにそれとなく伝えよう。俺たちに知らされてからもう十日になる。探索の時間はいくらでも欲しいが、さすがにフレンが気の毒だ」
「分かった。君に任せる」
セテスも自力で一日二日はフレンを探したはずだから実際はそれよりも数日長い。月末までフレンは堪えられると知っているが、クロードの言う通り辛い時間は短い方がいいに決まっている。だがローレンツの記憶に残るクロードらしからぬ判断だった。そう感じてしまったことが申し訳なくて、ローレンツも先程のクロードのように相手から視線を外した。
「なんでそんな意外そうな顔してるんだ?」
褐色の手が白い頬を挟んだ。彷徨う視線をこちらに向けろとクロードは言いたいらしい。
「すまない、どうしても自分の記憶と比べてしまう」
「でもお前の目の前にいるのは俺だよ。お前に心を開こうとしなかった奴じゃない」
緑の瞳がローレンツを捉えた。きっと直視したら目を傷めてしまうほど眩しい、と思ったから五年前の自分は目を閉ざしたのだろう。
「明日、先生方に言うなら君抜きで戦闘があるだろうから失礼するよ」
クロードの瞳に映る自分をこれ以上、見ることにローレンツは耐えられそうになかった。
翌日、イグナーツが駆け込んできてイエリッツァの部屋で倒れているマヌエラを発見、死神騎士との戦闘の後にフレンと昨年度の学生だと自称するモニカが保護された。畳む